米国主要地域におけるゲーミング賭博制度 |
146. ネバダ州・制度の仕組み ① 公共政策としての考え方 |
2012年11月23日 |
米国ネバダ州では下記の考え方がゲーミングに係る公共政策の基本とされ、同州の憲法に規定されている(463.0129(1)条)。 (a) ゲーミング産業は州の経済並びに住民の一般福祉に関し、極めて重要な産業である。 上記は、同州におけるゲーミング規則、ゲーミングに関し何らかの判断を求められる場合、常に参照され、尊重されるべき基本的な考えとなっており、ここに全ての制度、規制に係わる背景となる考え方を見ることができる。勿論かかる方針が最初からあって制度が作られたわけではない。長年にわたる実際の政策の遂行に基づき、あるべき考え方、方針として、段階的に醸成され、州民の同意を得て、制度の前提としてまとめられた考えでもある。 この考えは、ゲーミング産業を一つの産業として認知し、その育成を図るとともに、地域社会との共生や、住民による信頼と信任を取得するために、その健全性と安全性を担保するためのあらゆる措置を政府としてとるということでもあろう。この背景には、犯罪や腐敗、汚職の根を根絶すれば、確実にゲーミング産業は健全化できるとともに、逆に何もせずに放置した場合には、かかるリスクもありうるという認識がある。勿論上記は1960年代以降のネバダ州の経験と実践から政策として策定されたもので、それ以前は、ネバダ州でも歴史的に賭博行為を単なる悪ないしは迷惑な行為と見なす傾向があった。当時、ネバダ州最高裁では、ゲーミングを「悪の根源」とし、カジノを「怠惰と無秩序をもたらす迷惑な行為」と断定した判例もあった程である。また、米国連邦最高裁でも類似的な判例が下されたことがある。 これは、米国においても、わずか半世紀前には、やはり一般大衆の賭博行為に対する感情的なアレルギーや、これを社会的退廃とみる倫理観が根強く社会の中に存在していたことを物語っている。国民の大半が賭博行為を悪とみなしていた以上、一定の正当性の枠組みを保持しながら、実態を健全化していくためには、適切かつ厳格な規制が致命的に重要であったことになる。 かつ、厳格な規制がしっかりと施行されることにより、賭博行為の健全性、安全性に係わる国民の認知度が向上したことも事実である。これにより、時間をかけて、段階的に実績を積み、国民のパーセプションやアレルギーを変えていったというのが米国における許諾賭博の現実である。米国の制度や規制の仕組みは、ある日突然できたわけではなく、時間をかけてその内実が段階的に、かつ緻密に構成されてきたことに留意する必要があろう。 |