米国主要地域におけるゲーミング賭博制度 |
164. ニュー・ジャージー州・制度の仕組み ⑦ 規制の段階的緩和 |
2012年12月11日 |
ニュー・ジャージー州の制度の特徴は、ゼロから構築した制度である為に、網羅的かつ体系的で、段階的に制度が構築されたネバダ州と比較すると相対的に理解しやすい法律の構成と内容になっている点にある。但し、ニュー・ジャージー州はニューヨーク市の隣に位置し、法制定当時のニューヨーク市にはまだマフィア組織の影が残っていたことを理解する必要がある。かかる事情により、必要以上に制度が厳格な内容になり、一部は規制当局、法の執行当局がダブルにチェックしたりするリダンダントな内容であったりした側面も多い。これらは、段階的に規制緩和の対象になり、時代の状況変化と共にその内容が緩和されている。「常識」的アプローチに戻ったとされているが、法や規則そのものをより、現実にフィットするようにした動きでもあろう。かかる状況に至った理由としては、①大企業の参入により、カジノ産業自体が成熟化したこと、②現実の施行の実践に伴い、カジノの健全性・安全性が確認され、制度的許容度がより高くなったこと、③規制機関も経験が豊富になり、管理の在り方を効率化できるようになったこと、④その他の州での経験・実績より、ニュー・ジャージー州のみがより厳格な規制を設けることの不利が段階的に認識されてきたこと等があげられる。 規制機関となるカジノ管理委員会は内部組織として、規則見直し委員会(Regulation Review Committee)を設置し、民間運営事業者等の意見を聴取しつつ、2011年までに100以上の制度改定を実施してきた(規制緩和の内容を見ると、如何に詳細に至るまで規制の対象にしたかを理解することができる)。主な制度改定・規制緩和の経緯は下記になる。
他州の動向や、現実の商慣行、遊び自体の多様化や、機械・システムの著しい発展等に柔軟に対応し、これを制度の中に取り入れるように政策指針を変えてきたということがニュー・ジャージー州の実態であろう。2005~2006年にかけて、新たな施設や旧施設の更新等の建設ブームが生じ、売上は上昇機運にあったが、リーマン・ショック以降は反転し、毎年顧客数も減少し、売り上げも税収も減少するという状況が生じている。近隣諸州との競争も激化し、2011年に議会はカジノ管理法の大幅改正による規制緩和の実施や、インターネットポーカーの許諾等様々な市場活性化指針を打ち出した。結果、2012年以降、同州の制度や規制の仕組みもより効率化、簡素化する方向に軸足を移しつつあるといえる。 |