情報やシステムの技術的発展は、顧客とのインターフェースのみならず、機械ゲーム(スロット・マシーン)やビデオ・マシーンそのものを物理的に変え(機械ゲームの電子化と情報武装化)、かつ機械の管理や不正監視技法をも根本的に変える事象をもたらしつつある。
では、個別の機械ゲームのレベルでは何が起こったのであろうか。ゲームと機械自体の電子化、情報化である。スロット・マシーンとかビデオ・マシーンと呼ばれる機械は、最早単なる電子機械端末にすぎず、全てが電子化され、コンピューターそのものでしかない。金銭の出入りも、顧客の支払いは、現金(紙幣)やクレジット・カードからの支払いは受け付けるが、機械によるペイアウト(支払)は、単なる紙であるバーコード・スリップにする等顧客と機械の間の金銭のやり取りを一方的に単純化するキャッシュレス化が進んでいる。またサーバー管理型機械ゲームなるものが生まれた。これは端末の見かけは全く従来型と同じなのだが、乱数発生機は個別の機械に設置されているわけではなく、全ての機械・システムをオンライン上で別の場所に設置されたサーバーが統一的に管理し、このサーバーに単一の乱数発生器が設置され、このサーバーが全ての当たりを決めるシステムになる。かつ、複数のゲームを同じ端末で遊べることや、一つのサーバーからこれら複数のゲームを、複数の連結した端末機器に同時平行的に提供できるという仕組みとなる(あたりを決める仕組みは、個別の機械ではなく、中央のシステムとなるため、これではスロット・マシーンというよりも宝くじに近い。ここからかかる電子式ゲーム機械をビデオ・ロッテリー・ターミナル(ビデオ・ロッテリー端末機 ~VLT~と呼称することもある)。ゲームのソフトは全てサーバーが管理し、ソフトの変更、更改も瞬時にオンライン・ダウンロードで実施できることになる。
かかるスロット・マシーンの電子化、情報武装化は、二つの効果を生み出した。第一に、①全てのオペレーション・データーを集中的に管理することが可能になり、全体を監視し、コントロールし、データ・ログと売上・払い戻しポジションを人が介在せずにシステム的に押さえることが可能となった。これにより、ミスや不正を限りなくシステム自体が防御することができることになる。これはまた、②規制当局が、システム端末を事業者とオンラインで連結し、売上情報やゲームの推移に関するデータを共有することにより、確実に、かつ正確に不法行為があったか否か、問題が生じていないか否かを確認できることになる。またこれにより正確に課税対象額を捕捉できる。少なくとも人間が介在していないため、現場レベルでは、監視のレベルがかなり緩くても事足りる。かつ、機械の蓋を開けたり、人為的に操作をしたりすることは全てシステムがチェックするため、いつ誰がどこで何をしたかが、コンピューターに記録されてしまう。これではインチキも不正も、脱税も起こりようがない。現場での監視は不要になり、規制当局の管理と監視をそれだけ簡素化し、合理化することに繋がるといえる。
この様に電子化、情報化は機械ゲームの世界の在り方を大きく変えた。かつこれが、顧客側と、ゲームを提供する側並びに規制当局という三つの異なった主体間の関係を大きく変えることに貢献したことになる。即ち、①機械に関する限り、限りなくマンパワーが不要となり、省力化や合理化が確実に進んでいること、②これに伴い監視やモニタリングのシステムも向上し、不正が限りなくなくなる側面がでてきていることが大きなポイントでもあろう。
制度や規制の観点からは、情報化や技術の進展は二つの相矛盾する課題を提起し始めたといってもよい。即ち、システム化、オンライン化、集中化という意味では、上記で述べた通り、監視と規制を限りなく単純化し、効率化するツールが生まれている。この結果、不正も悪も、脱税も、効果的に排除することができる。関連する規則もこれに対応し、柔軟に技術の粋を取りいれる必要が生まれてきたことになる。一方、ネットワーク化、分散化という観点からは逆の事象が生じつつある。インターネットを通じたフラット化、分散化、個人化の推進は、インターネット・カジノやネットを利用した様々な賭博行為を違法な状態で、規制の対象にならない形で増やしつつあり、これに対し、効果的な規制の仕組みは現状技術的には存在しない。規制できない分野も生まれてきているということになり、何らかの対応が求められている側面もある。