米国では、規制当局と共に公安当局、あるいは州司法省の別働部隊ともなる一種のカジノ警察的な公安・監視機構が存在し、規制機関と法遵守・違法行為摘発を担う公安当局との関係は権限と役割を分担しあうことがゲーミング・カジノ制度の仕組みの基本的な構図となっている。一方、欧州各国の制度は、規制の基本的な仕組みは米国と類似的ではあるが、監視や管理のあり方、及びこれを担う規制機関の位置づけ、規制機関と公安当局との関係の在り方は、制度としては米国のように緻密あるいは過剰ともいえる慎重な考え方をとっているわけでは無い。入り口段階で、参入する民間主体の完璧な誠実性・清廉潔癖性を審査し、かつまた施行段階において施行に関連するあらゆる情報を入手することにより、適切な法の施行や法の遵守を監視するという考えに、より焦点をあてている。これにより、悪や不正は効果的に防ぎうるという判断から、過剰ともなる監視・管理は不要という考えが一部には存在する。
また、未成年者や不適切者の入場を規制するために、入場者に対し、本人確認の為のIDチェックを実施する国が多い。これにより、不適格者を排除する仕組みは徹底しており、場内において秩序が乱れる可能性も少なくなる。また公安当局や警察が常時駐在するという雰囲気には無く、警察官の立ち寄りも事実として見られないが、本来的にその必要性が少ないのであろう。但し、ゲーミング粗収益課税が厳格に規定される過半の国においては、ゲーミング粗収益の認定、確認、税額確定に関しては、緻密かつ厳格な制度上の規定が存在する。かつまた新たに制度を構築したスイス等においては、機械ゲーム収益は全てシステム的に管理され、サーバーのソフトとデータを規制機関が完璧にオンラインで共有し、限りなく人為的な操作を排除し、不正行為が起こり得ない体制を構築している。米国にかかるシステムを利用した規制の考え方が少ないのは、既に既存の施設がある場合、事業者に巨額の追加的投資を要求することになり、新たな技術を用いた効果的な規制の考え方を採用できにくいという土壌がある為でもある。
不正の防止や悪の排除は、顧客の信頼度を得る為には必須の要素となり、カジノの健全性と安全性を保持することは、施行を担う主体にとっても、重要な経営・運営上の戦略目標になる。欧州においても、ほぼ全ての施設において遠隔監視カメラ(稼動式型、固定式型)による監視モニターによる監視が実施されているが、必置施設となるか否か、監視範囲や手法のあり方、デジタル・アナログビデオの管理手法や、規制当局によるアクセスの度合い、監視の強さ等は国、地域により大きく異なる。例えばドイツでは地方政府が独自に規制を設けることになるため、地域によっては監視や管理の弱い場所も存在する。また遠隔カメラによる監視システムがドイツにて広範囲に用いられ始めたのは最近の事象でしかない。
欧州各国の規制のあり方は、国の機関として一定の権限を保持する規制機関を設けることが通例となる。但し、その権限のあり方と内容、行政機構における実際の位置付けは各国毎に異なり、一様ではない。規制機関を単純な諮問会議に近い性格の機関とし、その権限を限定することもあれば、規制機関の構成員が行政府内部の関連省庁の幹部により構成され、実質的に政府そのものである場合等も存在し、行政府からの独立性、中立性に関してはあまり重要視されていない。但し、許認可の付与、当該許可の剥奪、更新拒否、あるいは事業者の適格性審査等に関しては規制機関がその評価・審査に関与していたり、包括的な権限を有していたりすることが多い。尚、規制機関は、運営を監視・監査する権限も付与されていることが通例だが、実際は公安当局や警察当局が業務を分担しているケースも多い。また米国のように規制機関が準司法権を保持することはない。勿論フランス等のように、国の公安当局が直接的、一元的に管理・規制を担う国も例外的だが存在する。
所轄官庁は国の事情によっても異なるが、法務省・司法省ないしは内務省等の公安・治安維持を司る官庁が主体となる場合と、主に税収確保の観点から大蔵省ないしは国税庁等の管轄になる場合、あるいは経済省や文化省等産業政策の観点から管轄を定めるという三つの傾向に分類できる。これは当該国における施行の政策目的が何かにより、所轄官庁が変わることを意味している。