イントラネットとは、特定の組織や団体あるいは区域(エリア)を限定して閉鎖的なインターネット領域を設けるという仕組みでもあり、一定組織内においてインターネットをツールとして利用する手法になる。インターネット賭博は好ましくないし、認めるべきではないが、イントラネットによる地域限定的なインターネット賭博は認めるべきという意見がある。どういうことであろうか。例えば、カジノ場、ホテル、ショッピング・モール、飲食街等を併設するリゾート施設の場合、顧客にこの施設内においてのみアクセス可能な端末モバイルに、イントラネット機能をもたせ、クレジット・カードで一定資金を預託(デポジット)させた上で、この予算内で様々な賭博ゲームや賭博行為を持ち運べる端末機械や客室のTVを通じて顧客が楽しめるようにするという考え方になる。この場合、あくまでも端末モバイルからネット賭博にアクセスできるのは、限られた場所、限られた顧客でしかない。インターネットとはいいながら、自由に外からはアクセスできないことになり、ソフトもこのリゾートを所有するカジノ事業者が当該リゾート施設内で提供するだけでしかない(専ら客室やプール等での利用が志向されている)。米国のネバダ州では、かかる考え方に基づくモバイル端末による特定区域における賭博サービスの提供は、制度的に認められるようになり、やはり施設限定的に実現している。米国のその他の州でも類似的な動きはある。米国では、現状、所謂インターネット賭博は禁止されているのだが、イントラネットによる限定的なネット利用の賭博は、連邦法上問題となっているインターネットとは異なるという解釈なのであろう。
ところが、現実にはこのイントラネットとインターネットとを混同し、ネット賭博を認めるべしというおかしな議論が存在する。イントラネットは、通常のインターネットとしての属性を備えてはおらず、混同すべきではない。
イントラネットの特性とは、
① 地理的隔離性・限定性:
特定の施設内とか極めて限定された場所においてのみ、かつ特定の顧客に対してのみ提供されるサービスであること。
② アクセスの限定性:
一般の人からはアクセスできず、かつ顧客も特定の提供されるソフトウエアに特定の端末からアクセスできるだけであって、お互いが自由なアクセス性を保持しているわけではないこと。
③ 閉鎖性:
上記は一定の閉鎖的空間において、隔離された状況の中で、ネットを通じて賭博行為を提供していると考えることもできること。この意味では、顧客を限定することが基本となり、一般性・汎用性はないこと、
等になり、極めて限定的なネットの利用の仕方でしかない。
イントラネットによる賭博行為の提供は、確かにツールとしてはインターネットを用いているのだが、これはあくまでもツールにすぎず、一般性・汎用性に欠ける場合には、はたしてこれを通常のインターネット賭博の範疇に入れるべきかに関しては、大きな疑問が残る。提供される端末モバイルから、好き勝ってに、インターネット賭博のサイトにアクセスできたとしたならば、これは通常のインターネットを利用した賭博行為でしかない。イントラネットを活用した賭博提供行為が単なる内部的なかつ閉鎖された空間のみでの管理された賭博行為の提供である場合、これは陸上設置型カジノの機能の一部拡張でしかないことになる。
尚、2010年4月にフランスで成立した「インターネット賭博法」は、ネット賭博の属性を「オンライン賭博とは、賭け事のコミットメントが独占的にインターネットを介在して行われる賭け事ないしはゲーム」と定義し、「オープンな場所、あるいは私的な場所において、顧客が賭け事の賭け金を支払うためだけの目的を持って端末機械を用い行う賭け事やゲームを含まない」としている。すなわちインターネットを単なる支払のツールとして用いる場合、あるいは極めて閉鎖的な私的空間におけるインターネットの利用となるイントラネットの場合等は、例えその対象が賭博行為であっても、そもそも「インターネット賭博」という定義の対象外として排除する法規定を設けていることになる。