オンライン賭博事業者とは、当初は極めて小規模、少額投資のベンチャー的な企業であり、カリブ海等の軽課税国にベースを置き、かかる国に設置されたサーバーから世界に向けて、ゲームを提供するというパターンのビジネスモデルを担う主体でもあった。一方、これら企業の内、一部企業は段階的に事業規模を拡大し、複数サイトを買収・運営したり、独創的なゲームサイトを提供したりする等して、人気を博し、段階的に大きな企業組織に成長している。当初は事業規模も小さく、制度的にも極めて不安定な時代が継続した。あらゆる国において、ネットでゲームを提供することが合法なのか、違法なのか不明な側面もあり、これが市場の制約要因となったわけである。この状況は今でも存在する。一方、その後、制度的にネット賭博事業者を認知したり、株式市場において、彼らの将来性を正当に認知したりするという先進国市場(英国)も生まれてきたことが現実になり、段階的にネット事業者の存在が認知されてくるようになってきた。インターネット賭博の社会的認知が進展すると共に、その成長性が着目され、従来のベンチャー企業のみならず、既存のブックメーカー(英国の賭博専業事業者)や伝統的なロッテリー事業者、カジノ運営事業者等も子会社を通じて市場に参入し始め、多種多様な主体が、この業に参入するに至っている。これら企業は、極めて短期間に、成功をおさめ、売上、純利益と共にかなりのレベルまで成長し、一部トップレーヤーのインターネット賭博事業者は、バブル期にロンドン証券市場において上場するまでに成長した。
株式上場が認められる国(英国)において株式上場を果たした企業は、モバイル、携帯、コンピューター、VLT(ビデオ・ロッテリー・ターミナル)、伝統的な店頭によるブッキング・メーキング等多種多様なエンターテイメント賭博を包括的に提供する複合的なエンターテイメント企業に成長しつつある。またこれら企業の内、一部大手企業は、インターネットのオペレーションを、子会社を通じ、ジブラルタル等の軽課税国に事業を移している(英国本土の税の高さ、手続きの煩雑さを回避するという考えなのであろう)。
一般的には、これら企業の基本特性は下記にある。
① 大企業から中小企業迄多様な主体が参入し、参入者は現実的には二極化している。名の知れた、資本力、知名度も高い、信頼のおける企業もいれば、全く何処の企業かも不明な企業も存在し、顧客の立場からは、これを峻別できない(参入障壁が比較的低いことが、規模の大小を問わず、多様な企業の参入を可能にした)。
② この分野における所謂大企業とは、ブックメーキングや一定の専業領域を保持しつつ、ここからネット関連事業を外延的に育てて、拡大したり、既存の賭博関連事業の外延業務としたりしてこれを担っている場合が多い。但し、事業者によっては、外延的な業務の方が本業より大きくなってきたというのも実体である。
③ 制度的にはグレーな領域がまだ多い分野であるために、これら事業者は、事業に対し、一定の正当性を保持するために、正当なライセンスを発給できる国にその本拠を置く(サーバーを設置し、限られた人間を配置することで可能になる)ことが通例である。かつ運営費用や税金負担を軽減できるようなライセンス付与国を選択する性向がある。もっとも軽課税国である場合には、規制自体は極めて甘く、逆に、顧客の信頼や市場における信任を取得することは難しい可能性もあり、①費用は高くとも、先進国市場においてライセンスを取得したり、②業界団体による自主規制・監視・認知等により、信頼性を向上させる仕組みを選択したり、③あるいは先進国市場で株式上場し、認知度や信頼度を高めたりする等の努力がなされている。
④ 先進国でライセンスを得て、税金を払い、正当な業務として当該国で認知を受けた場合、この国を拠点としつつ、サイバー世界において、かかるインターネット賭博が禁止されている市場においても、市場開拓と顧客開拓は可能になる。これにより、制度が曖昧な国、あるいは法制度自体が欧州の様に、個別の国の法律と、EU法という二つの層がある国々の場合には、企業と国との間で係争事由が生じ、法廷による判例で、実質的な制度の考え方が固まってくるという国、地域も存在する。かかる状況より、一部欧州のネット事業者は、挑戦的な法務戦略をとり、訴訟を営業戦略の武器として、市場開放を実現しつつある。
市場は明確にうまくチャンスを捕えて成長軌道にのった一部大手ネット事業者と群小の中小企業者に二分化される状態が生じている。一部事業者は、実績、経験よりブランド・ネームを確立し、これが顧客に支持され、成長を加速させている側面もある。一方、中小事業者でも技術やノウハウを確立できた事業者は逆に伝統的な大手賭博事業者と合掌・連携したり、技術供与により生き残りを図ったりする等、様々なビジネスモデルが生まれつつある。