オンライン・ポーカーを巡る2011年以降の米国各州の主な動きはめまぐるしいが下記になる。
① ネバダ州では、2011年州議会で州内に限りオンライン・ポーカーの免許を付与する規則をネバダ州ゲーミング委員会が定めることができる法案を議決、同委員会は2011年12月に包括的な規則改定を公表、既存の制度的枠組みを改定し、州内でオンライン賭博運営に関するライセンスを付与する基本的枠組みを定めた。この結果、2012年夏にまず、8事業者に対し、州内でのインターネット・ポーカー(Online Intrastate Poker)ライセンス付与を決定し、同年10月には更に3事業者を追加し、2013年3月時点では20社にライセンスを付与している。各社提案による技術的側面や規制の詳細側面が規定されつつあり、2013年5月から試験的に米国発のインターネット・ポーカー・サイトが実現した(州内住民しかアクセスできないサイトになる)。尚、制度としては「双方向的ゲーミングに関する規則5A号」となり、ゲーム種をポーカーに限定しているわけではないが、当面は、ポーカーに限定するという政策的意志になる。税率は事業者の粗収益に対し、6.7%である。また、ライセンス料は50万㌦、申請費用15万㌦~100万㌦、ライセンス更新費用25万㌦とかなりの高額である。尚2013年3月に再度制度改定が行われ(法案AB-144号)、他州でネット賭博が制度的に認められている場合、州際間の協定により、ライセンス事業者が二つの州の顧客に対してもサービスを提供できるようになった。
② デラウエア州では、議会が2012年6月に法案HB333号を可決した。これは、州政府のエージェンシーであるDelaware Lotteryが規制者となり、州内においてインターネットによるテーブル・ゲーム、ビデオ・ロッテリー、ポーカー等の提供を可能にする仕組みの法律になる。実際のサイトは三つの競馬場併設型カジノ(レイシーノ)が共通の技術プラットフォームを通じて運営することになる。即ち、既存の制度的枠組みと既存のライセンス付与主体を活用し、この枠組みの中でのみ、インターネットカジノを自州の州民に限り提供するとう仕組みである。運営細則が制定され、技術提供主体も選定されて、2013年中葉には運営開始がなされる予定となっている。
③ ニュー・ジャージー州でも紆余曲折の結果2013年3月に法案を可決、知事が著名し、ネット賭博を認める制度的枠組みが実現した。考え方としてはニュー・ジャージー州に存在し、ライセンスを保持する既存の陸上カジノ事業者に追加的ライセンスを付与し、オンライン・カジノを認める内容になる。10年間の時限立法であり、継続する場合には再度議会の同意取得が必要である。税率は粗収益に対し15%(陸上カジノ施設は8%)、サーバー等の機械システムは全て同州のアトランチック市内の既存のカジノ施設内に設置し、他の州で類似的にオンライン・カジノが認知された場合、相互認知契約に基づき当該州の顧客がニュー・ジャージー州のオンライン・カジノに賭けることができる。ネバダ州では、オンライン・ポーカーのみであったが、ニュー・ジャージー州では、特段制約を設けておらず、通常の陸上カジノ施設と同じゲームが許諾の対象になっている。
④ イリノイ州では、制度改定の話はある程度進んだが、連邦政府の動向を睨み、議会での議論は、現状は保留となっている。また、カリフォルニア州、ワシントンDC, アイオワ州、マサチュセッツ州、ペンシルベニア州でもインターネット・ポーカーを認める法案が上程されたが、これらの州では否決され、制度的枠組みはまだ実現するに至っていない。但し、これらの州でも継続的に法案を上程する動きが存在し、この動きは止められず、時間の問題で様々な州に伝播することになると想定されている。
一部先行する州から始まったこのインターネット賭博を認めるという動きは、今後増えこそすれ、止まることはなさそうである。一方この動きに対し、連邦司法省は何等かの動きを示しているわけではなく沈黙を守っている。今後この動きが加速する場合、各州にバラバラの法制度ができ、ネット市場がこれら州ごとに分断されるという整合性のないシステムがうまれてしまうことを懸念する声も強い。反対の声は強いが、これが連邦法により整合性のある統一的な制度を設けるべきとの主張にもなっている。この動きは2011~2012年に存在したが、連邦議会レベルでは強い支持を得られていない。
一方、民間の任意団体、賭博関連業界団体、州議会では、インターネットを用いたポーカーを制度的に認めようとする主張が声高に叫ばれ、日増しに強まりつつある。インターネット賭博は禁止とする連邦法上の制度的枠組みは上記の通り、その一部が現実として崩れることは明白で、時間の問題で現実と制度との矛盾を整合性のあるものに改定する必要性が増しているといえる。