インターネット・カジノは、ライセンス事業者が顧客に登録をさせ、顧客が勘定を持つことにより初めて顧客にゲームを提供できる(顧客登録に関しては、18歳以上であること、姓名、住居、有効な電子メールアドレスの情報提供等が必要となる)。虚偽の申告の場合には、登録不可となるとともに、18歳未満の人物も登録不可で、1人1勘定のみ勘定の開設が可能となる。また、事業者は顧客に対し、ゲームの規則、手続きや手数料を開示する義務があり、顧客からの支払は、クレジット・カード、デビット・カード、電子送金、小切手、その他規制当局が認める手段に限られる。ライセンス事業者が顧客に与信を与えることはできず、かつ顧客の年齢、居住地を確認するまでは、事業者は€2,000以上の支払をすることは認められていない。また、30ヶ月以上勘定に移動がない場合には、残額を顧客に返却するものとし、返却できない場合には規制当局が支払いを受ける。事業者は当局が認可するクレジット会社の顧客勘定と自らの勘定とを明確に峻別する義務がある。
また顧客の勘定の状態(勝負け)を画面へ表示すること、顧客による損失上限設定、自己排除規定等の設定を可能にする事等の義務がある。ウエッブサイトにゲームの規則、依存症患者対応機関等に関するハイパー・リンクの設定、サイト自体がマルタ規制当局の認証を受けていることの明記と規制当局へのハイパー・リンクの設定等も要求される。取引記録場所に関しては、規制当局が認証するとともに、会計年度終了後60日内に監査済み財務報告書を提出する義務がある。また各半年営業経過後30日以内に、中間財務報告書提出義務があり、規制当局は追加的な財務情報提出要求権を保持している。規制当局の判断により、事業者ならびに主要職員が法並びに規則に違反しているとみなされる場合、検査を実施できる。このために査察官が存在するが、査察官の権限は、遠隔ゲーミングの運営に利用されているサーバー、ソフトウエアなどの検査、試験、検証となり、検査・検証のために規制当局が指定する別の場所に機材、ソフトウエアを移動させる権利、サーバー、機材、ソフトウエア、取引書類が設置してある場所・建物の立ち入り検査、検査のために必要となる情報の請求権、検査の過程で発見した書類・情報等を押収する権利(違法行為でないことが確認された場合、押収された機材、ソフトウエア、書類等は検査終了後返却される)などになり広範囲に亘る。
マルタの企業所得課税は外資企業では約25%である。ゲームに対する課税はこれとは別に徴収され、下記の通りで、規制当局が徴収する。
① クラス1ライセンス(カジノ賭博):
ライセンス付与後、最初の6ヶ月の間、毎月 € 4,666(US$6,239)、その後ライセンス全期間に渡り、毎月€ 7,000(US$9,373)の支払。
② クラス2ライセンス(固定オッズ、パリ・ミュチュエル賭博):
– 固定オッズ:預託された賭け金総額の0.5%。
– ベッテイング・エキスチェンジ: 各個客毎の純勝分の0.5%
– パリ・ミュチュエル賭博: 総賭け金額の0.5%。
③ クラス3ライセンス(ポーカー・ルーム):
実際の勝ち金の5%。
④ クラス4ライセンス:
最初の6ヶ月は無税、その後6ヶ月は毎月€2,330(US$3,119)、その後はライセンス終了時まで€4,660(US$6,239)
上記全ての税には支払い上限(キャップ)があり、ライセンス毎に、年€ 460,000となる。尚、企業としてITC(International Trading company,マルタ住民に対して取引をしてはならず、一定の株式はマルタ人が取得)の法的地位を取得すると配当後、企業所得税が還付される(マルタの市場は小さい為、これらネット企業はマルタ住民へのサービス提供をせず、あくまでも外国、自国外のサイバー世界に対するサービス提供をするビジネス・モデルとして企業を構成し、税金還付を受ける企業が過半となる)。この結果、マルタにおける実効税率は4.17%となり、極めて競争的になる(企業所得税は35%となるが、配当を取得する非居住者は30.83%の還付を受けることができる。株主配当に関する源泉課税、印紙税、外貨交換規制はなく、ITCからの配当に対しても課税、規制はない)。
顧客保護や清廉潔癖性を保持する為の規制や制度は、あまり表に見えない以上、如何に効果的に実施されているか次第で、制度や規制の価値は決まってしまう。マルタの制度は制度的にはかなりしっかりしたものとはなっており、市場における実績も経験も積み重なっているという意味では、興味深い内容となっている。