カジノ立法化の議論は自民党の議員有志が2001年に検討を始めて以来、既に12年以上に亘り、永田町を中心になされているのだが、この間、政治と行政はお互いに距離を置きつつ、政策論議に関与してきたという経緯がある。政治(立法府)と官僚組織(行政府・省庁)がうまくかみ合わないと立法措置は実現しないという典型例のようになった。では、この両者の関係は本来どうあるべきなのか、何がポイントでどうすれば実現するのであろうか。
下記等が要点になる。
① 政治的に強いイニシアチブの必要性:
立法府による立法に向けての強い意志が無い限り、行政府は動かないし、民意も動かない。政治家の中でも意見が割れる事案である以上、かなり強い、かつ継続する政治的なイニシアチブとリーダーシップが必要となり、これに基づく政治的な合意形成が必須の要件になる。政治の意思が弱いと、行政府はついてこない。
② 立法府と行政府による協力と連携:
政府内部で検討組織が存在し、立法府の動きを表裏で支えていかない限り、複雑な立法案はまず実現しにくい。法の施行を踏まえた詳細検討は、立法案策定過程から必須の要素になり、立法府だけではできるものではない。単純な法案ではない場合は特にそうなる。緻密な事前検討や裏作業も必要で、これが立法政策を裏で支えることになる。かかる意味での立法府と行政府の協力・連携は極めて重要である。
③ 必要となる民意と民による支援:
政治の強い意志を支える民意があることも政治の動きを後押しする。直接的な当事者となる地方公共団体や様々な民間団体による賛意や支援は政治を強力にバックアップすることになる。但し、民意があれば政治が動くではなく、まず政治が動かなれば民意も動くわけがない。何かの民による運動があれば確かに良いが、単純にはいかない。尚、政治家は、民の強力な連携組織があれば、政治は動けるというが、全く逆であって、政治の強い意志と行動が無い限り、民間の支援・協力組織はありえないし、できにくい。
④ 政府内部における強いリーダーシップの必要性:
政治の要請を受けて、実務課題をさばき、関係しうる省庁と問題を詰め、前へ進める作業を推し進める政府内部におけるパワーが必要となる。官僚組織を効果的に動かすには政府内部における政治家(閣僚級ないしは官邸)の指示が絶対要件になる。
⑤ スピードが重要、時間の経過は致命的な問題に:
政治家のレベルである程度のインテンシブな議論が醸成され、気運が盛り上がっている状態は長く継続しにくい。時間がたてばたつほど、焦点はボケる、問題は拡散する。後刻議論して詰めるポイントを今詰めろとなった場合、判断の優先順位が弱まる。問題を仕分けしながら、段階的に詰める戦略を意識として共有しない限り、必ず横からの議論が入り、時間をつぶすことになる。議論は悪くはないが、本質論ではない場合、案件形成には障害となりかねない。この場合、立法府と行政府の距離は広まり、案件形成から程遠くなる。
⑥ 政治レベルでの一体化した議論と合意形成こそが行政府を動かす:
二段階による立法戦術は、まずプログラム法的な推進法により、基本理念、考えを定義し、かつ実現の為の手順と手法を立法化し、この前提に立ちながら、より詳細の議論を政府に詰めさせ、詳細な実施法として後刻取り決めるという考えになる。推進法は法律事項は限定され、あくまでも推進を合意するための基本理念の定義と、検討のための政府組織の策定等のみが規定される。即ち、ここには詳細な議論はない。実施法の大枠の考えの策定に参加し、全体の構想が頭にある議員にとっては、合理的な手法になり、理解は早い。一方、何ら議論に参加していない議員にとっては、本来議論すべき項目が全て後送りにされ、曖昧なまま実施法を一方的に決められ、議論の余地が無くなるのではないかという懸念をもたらしやすい。かかる議論も立法府と行政府の距離を広げてしまう効果をもたらしてしまうため、立法府内部でのしっかりとした合意形成が必須の要素として、全ての前提になる。
上記様々な要件が一定レベルまで高まった段階で、初めて政治と行政は効果的に動くことができるとみるべきであろう。政治や行政の様々なレベルにおける合意形成の積み重ねがあり、初めて立法府と行政府は効果的に動くことができる。複雑な法案の実現にはこれが絶対要件でもあり、これを可能にする環境やタイミングも重要となる。
では如何なるポイントが我が国におけるカジノ制度創出に際しての論点になるのであろうか。以下では、超党派議連で議論された様々なポイントや、政策的選択肢の在り方を提示することにより、この全体像を解説することを試みることにしたい。