州政府が事業者から徴収するのは、ライセンス付与に伴う料金、売上に課される税、並びに違法行為の場合の罰金等になる。全ての税と料金・罰金等は二つの特別勘定に分けて徴収され、管理されている。
事業者に課されるライセンス料としては下記が徴収され、全額財務省に設置された「カジノ管理基金」(Casino Control Fund)と呼称される特別勘定に預託される。この資金は、議会の議決なしに、カジノ管理委員会及びゲーミング法執行局(DGE)の経費に充当することができる。事業者に課される様々な賦課金、罰金もこの勘定に振り込まれる。即ち全ての規制の費用は、これら事業者が支払うライセンス料、賦課金、罰金に伴う収入により賄われることになる。対象となる料金は下記の通りである。
① カジノ事業ライセンス料:最低20万㌦+実費、更新料は1年ライセンスの場合最低10万㌦、4年ライセンスの場合最低20万㌦
② 年スロット・マシーン・ライセンス料:500㌦/機械/年
③ ライセンス背面調査、その他規制当局諸費用:規制機関の判断で、全ての実費を賦課できる。
一方、ゲーミングに関わる税金は規制機関であるカジノ管理委員会の財務評価部が、複数の税種を一元的に徴収し、財務省に設置された「カジノ歳入基金」(Casino Revenue Fund)と呼称される特別勘定に預託し、管理している。また、この歳入の使途判断に関しては別途「カジノ歳入基金諮問委員会」という知事の諮問機関が設けられている。同州におけるカジノ関連税は下記の通りである。
① 粗収益課税:
カジノの総粗収益(総賭け金から顧客勝ち分を差し引いた売上額)に対する売上課税で税率は8%となる。この税項目に、監査による超過課税、罰金、金利その他調整項目を含む。最大の税収でもあり、法律により、その使途を高齢者並びに身体障害者向けの支出プログラムにしか支出できない目的税となる。2010年における税収総額は2億7810万㌦に達する。
② 投資代替税:
法は、アトランテイック市再生の為の、再投資義務を設けており、再投資をしない場合には投資代替税が徴収される。即ち、総粗収益に対し、2.5%を追加的に税として納税するかあるいは1.25%相当額を、CRDA(カジノ再投資開発機構)を通じ、アトランテイック市の地域社会・経済開発に再投資することが代替的な義務となる。現実的には全てのカジノ施設が再投資を選択し、税とはなっていない。カジノ事業者は、CRDAとの契約行為により、50年間に亘り、毎年売上の1.25%を再投資として資金拠出し、配当はCRDAから受領する。法律により当初の3年間は全額アトランテイック市の住居・諸公共施設開発投資に充当され、以後、段階的にアトランテイック市の投資分を少なくし、南ジャージー、北ジャージーにおける開発投資にも投資された。CRDAは債券発行、融資、補助金等の手法により通常の場合では、資本金を集められない開発投資案件に投資を実行することがその目的でもある。
③ カジノ駐車税(利用者転嫁税):
2003年法律改正により導入されたもので、他州との競争に勝つために、カジノ外の市のインフラ増強の為の原資とする課税である。カジノ施設で使用されている駐車場につき一日当たり3㌦の課税となる(このうち50㌣がカジノ歳入基金に預託され、2.50㌦がCRDA~カジノ再投資開発機構~に割り当てられ、CRDAがアトランテイック市の再開発投資のために発行する債券の償還原資に充当される)。2010年にカジノ歳入基金へ入った税額は500万㌦に達する。
④ カジノ宿泊税(利用者転嫁税):
上記と同様に2003年に導入された税である。顧客により利用されたホテル各部屋に対し1日当たり3㌦の課税である(内2㌦がカジノ歳入基金に、1㌦がカジノ再投資開発機構(CRDA)に割りあてられ、同様に再開発投資のための発行債券の償還原資とされた)。2010年にカジノ歳入基金に入った税額は500万㌦に達し、これも利用者に転嫁される税となる。
⑤ マルチカジノ・プログレッシブ・スロット税:
カジノのサービス事業者によるマルチカジノ・プログレッシブ・スロットに関する収益に対し、8%の課税で、2010年では税収340万㌦規模に達した。
⑥ 失効債権課税(Expired Obligation):
顧客に対するゲーム貸付債権は、支払迄課税対象とはならないが、不良債権となった場合、失効した債権の一定率を納税する義務がある。2010年の納税額は410万㌦になる。
上述中、③~⑥の課税は、基本税ではなく、時代の政策的ニーズ、財政需要に基づき、追加的に設けられた課税になる。この様に、担税力があると判断される場合、様々な増税手段を駆使して、財源を確保するアプローチが取られていることになる。